●家族問題
14 利用者と家族の意見の食い違いに困っています。
14 利用者さんとはうまくいっているのに、家族との人間関係がぎくしゃくして悩んでいるというヘルパーさんは、とても多いようです。
とくに、利用者さんと家族との折り合いが悪いときなどは、両者の間の板挟みになることもあります。しかしどの家庭にも第三者にははかりしれない歴史の積み重ねがありますので、あくまでも中立の姿勢を貫くようにしましょう。 その上で、介護サービスは利用者のためにあるものですから、両者の意見が食い違った場合は、生命の危機に関わるようなことでなければ、原則的には利用者さんの意見を尊重することが大切です。
具体的には連絡ノートをきちんとつけ、ご家族との連携を密にします。また、外部の人や業者との交渉を代行するなどの行為は安易に引き受けずにご家族の方の理解を得ることも必要です。
ご家族の信頼を得て、コミュニケーションを円滑に保つことが、結局は利用者さんのためになることを忘れないで下さい。
それでも双方の間に立って困る場合は事業所に相談して対応を考えましょう。
15 家事援助は利用者に限るのが原則ですが、同居の家族分の家事も頼まれる場合もあります。
15 家事援助は利用者が対象で家族は対象外というのが原則ですが、無下に断ると、利用者の心象を害し、信頼関係を損ねる場合もあります。利用者との亀裂が入らないように臨機応変に対応するしかない場合もあると思います。利用者の同居家族といっても、高齢の配偶者であったり、独身の娘や息子であったりと様々です。同居家族が高齢の配偶者であれば、対象外といって簡単に切り捨てられません。洗濯など洗濯機ですることですから、対象外の方の小物が少し混ざっていてもついでにするということもあるでしょう。同居家族が独身の息子や娘でヘルパーを家政婦代わりに考えているようであれば、きちんと説明し、理解を得るように努めるべきです。もちろん判断に迷うような場合は事業所に相談する必要があると思います。
16 訪問先は大家族です。日常の家事が大変なのか、ホームヘルパーを家政婦代わりに思っているようで、便利使いされ悔しい思いをしています。
16 ホームヘルパーは利用者の自立を支援するのが本意で、家事全般を請け負う家政婦とは立場が違います。そこで、ヘルパーとして、できる範囲、できない範囲をはっきり伝えるのが大切です。その場合、「これはできない」というより、「これはできます」と言ったほうが相手の受け取り方が違います。また、家事援助は利用者本人の援助が原則ですが、同居家族が多い場合、対象者と対象外の区分けが難しいのも現実です。掃除の範囲、風呂、トイレなど家族の中で利用者が何分の一使っているのか考え、使用頻度に応じて週に何回するかなどは、利用者と事業所が契約するときにするはずです。家政婦代わりに使われるというのは、ヘルパーのプロ意識の欠如によるものもあるのではないでしょうか。この上はプロのヘルパーに徹し、できることとできないことを明確にしていきましょう。
17 利用者さんにお金の管理を頼まれて困っています。
17 行政で高齢者の財産管理もしてくれますので、事業所の担当者を通して手続きをしてもらいます。決して個人で関わってはいけません。親しくなると、お金の相談も受けることが多くなります。公共料金の支払いなどは領収書が残りますので代行もできますが、「銀行からお金をおろして来て欲しい」などという利用者の要望はトラブルの元。安易に受けないことが賢明です。
やむを得ない場合も、必ず預かった金額とレシートや通帳などを、なるべく戻ったその場で照らし合わせてもらい確認を求めましょう。
18 身元引受人が利用者のお金を使い込みしていると相談されました。
18 利用者さんの勘違いや思いこみということもありえますので、その言葉をそのまま、うのみにせずに、まずは慎重な事実確認が必要です。その際、利用者さんを疑う様子をみせないように注意しましょう。
このような金銭問題の対応は、けっして一人では行わずに介護支援専門員や事業所の責任者等が加わり、必ず複数で関わるようにしてください。
客観的にみて、利用者さんの使い込みの可能性が高い場合は、自治体に設置されている機関などと連携しながら慎重に対応していきます。
19 仕事中、利用者の家の物を壊してしまいました。弁償は必要でしょうか。
19 ほとんどの事業所は、事故に備えて保険に入っているはずですから、個人で責任を取って弁償しようと思わないで、まず事業所の担当者に報告してください。ただ、利用者の家の物を壊してしまった場合は、弁償の話をする前に、まずは謝罪することです。利用者は高齢ですから、当然、家の中には古いものが多いでしょう。そして、その一つひとつに思い出が刻まれていることだと思います。形あるものはいずれ壊れると思っていても、壊れて悲しい思いをするのは利用者です。「大切にしていたものを私の不注意で壊してしまって、本当に申し訳ありません」と誠意を持って謝罪し、弁償問題は担当者にしていただければいいのではないでしょうか。
●事故・苦情
20 利用者さんがかなり体調を崩しているようですが、ご家族は入院させることをいやがります。ヘルパーとしての対応に悩んでいます。
20 利用者さんと関わり合いのなかで、その体調の変化に気づくことが多いのがヘルパーさんで、これもヘルパーさんの大事な役割りのひとつです。
体調の変化はその場だけで判断せず、数日後にまた伺って様子をみることも必要かもしれません。しかし、本当に病気なのか、入院が必要なのかどうかを判断するのは医師の役割です。心配なようでしたらご家族に主治医に相談するようにすすめてください。
と同時にご家族だけでなく、利用者さんの意志を尊重しなければなりません。 たとえ命に関わる病気であっても、本人または家族が自宅にいたい(いてもらいたい)と考えるならば、それをヘルパーはサポートしていくのも大切な役割です。
21 利用者に物を盗ったと思われて、嫌な思いをしています。
21 痴呆症の利用者さんによく起こりがちなのが、この「ものとられ現象」です。いくら勘違いだとわかっていても、そのまま放っておくわけにもいきません。
周囲が痴呆症がどういうものかを理解すると同時に、「痴呆だから」と片づけないで、なぜ誤解したのか原因を考え利用者さんに納得していただけるよう努力することも必要です。
家族と折り合いがつかずにストレスが溜まったときや、自分が大好きだったヘルパーさんが他の担当者に替わったとたんに、戻ってきて欲しいという期待を込めて「ものをとられた」と騒ぐ利用者さんもいるなど原因はさまざまです。 一般的には「慣れたヘルパーさん」が良いとされていますが、「ものとられ現象」は親密なほど起こりやすいという傾向にあります。ヘルパーさんを交代するのもひとつの方法です。
またいつもの場所にあるはずのものがないと不安になりますので、ヘルパーさんが「片づけすぎない」ことも大切です。
22 一生懸命やっているのに事業所に「ヘルパーを変えて欲しい」というクレームが入りました。
22 「変えて欲しい」という原因があるはずです。よく聞かれるのが「私とやり方がちがう」ということです。利用者さんのためによかれと思って行動していることが、やり方が違うために神経を逆なでしていたという場合もあります。
また、ヘルパーさんの「一生懸命」がかえって裏目に出てしまうこともあります。たとえば利用者に頼まれたわけでもないのに、台所用洗剤が必要だからと買ってくるのはよけいなお世話になってしまうのです。
また「ヘルパーが若すぎる」というだけで敬遠される場合もあります。ヘルパーさんと話をすることを楽しみにしている利用者さんのなかには、若いと話がかみ合わず年寄りの気持ちをわかってくれない、と考える人もいます。しかし、若いからという先入観を超えていただくには、気配りや行動で理解して頂くしかありません。
いずれにしても、相手がなぜ「変えて欲しい」というのか、その理由を考え相手を理解しようとする中で、自分自身も見つめ直す機会にもなります。より一層利用者さんの心がわかるヘルパーさんに成長していくチャンスにしてください。