2.HDS-R


                    (左)大谷郁代「横顔」
                    (右)大谷郁代:滝川画廊編画集

 HDS-R(長谷川式簡易スケール)

      もっともよく知られたスケールです。介護保険の医師意見書を書く際にも

     痴呆の判定に迷うような時に、この検査をしています。

      但し、軽度の痴呆症の場合、点数が正常値に出てしまう事も多いです。日頃

     の状態を見ていると、痴呆が無いはずのない人なのに・・・!

改訂長谷川式 痴呆判定テスト

 No.

質問

点数

1

お年はいくつですか?
 
満年齢が正確に言えれば1点。2年までの誤差は正解とみなす。

2

今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
 
まず「今日は何月何日ですか?」と聞き、「何曜日ですか?」「今年は何年ですか?」とゆっくり別々に聞くのも可。年・月・日・曜日それぞれの正解に対して各1点。年については西暦も正解。

3

私たちがいるところはどこですか?
 
「私達が今いる所はどこですか?」と問う。被験者が自発的に答えられれば2点。病院名、施設名、住所などは言えなくてよく、現在いる場所がどういう場所なのかが本質的にとらえられていればよい。正解がでなかった場合、約5秒おいてから「ここは病院ですか?家ですか?それとも施設ですか?」と問い、正しく選択できれば1点。

4

これから言う3つの言葉を言ってください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。(以下の系列のいずれか一つを使い、使った系列に印をつけておく)
 【1】系列〈a 桜 b 猫 c 電車〉
 【2】系列〈a 梅 b 犬 c 自動車〉

   点

5

100から7を順に引いてください(100引く7は?それからまた7を引くと?と質問する)。
 
93から7を引くと?」のように検査者が最初の引き算の 答えを繰り返していってはならない。各正解(2つの質問)に対して1点を与えるが、最初の引き算の答えが誤ったものであった場合にはそこで中止し、6の問題に進む。

6

私がこれから言う数字を逆から言ってください。
 (16-8-2 【23-5-2-9)を逆に言ってもらう。
 
数字はつづけて言うのではなく、ゆっくりと約1秒くらいの間隔を置いて提示し、言い終わったところで逆から言ってもらう。正解に対し各1点を与えるが、最初の逆唱に失敗した場合はそこで中止し、7の問題に進む。

 

7

先ほど(問題4の各系列)覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
(
自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合、ヒントを与え正解であれば1点)
 
答えられない言葉があった場合には少し間隔をおいてからヒントを与え、正解が言えれば1点を与える。ヒントの出し方は「桜」と「電車」が想起できなかった場合、「ひとつは植物でしたね」という形で与え、正解が言えれば1点。その後も「もうひとつは乗り物がありましたね」というヒントを与える。ヒントは被患者の反応を見ながらひとつずつ提示し、「植物と乗り物がありましたね」というようにつづけてヒントを出してはならない。

8

これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。
(
時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係のものを使うこと)
 
あらかじめ用意した5つの物品をひとつずつ名前を言いながら並べて見せ、よく覚えるように教示する。次にそれらを隠して「思い出す順番はどうでもよいのですが、今ここに何がありましたか?」とたずねる。物品に特に指定はないが時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など、必ず相互に無関係なものを用いる。正解に対し、各1点を与える。

9

知っている野菜の名前をできるだけ多く言って下さい。
 
具体的な野菜の名前を記述し、重複した野菜の名前を言った場合は点数に加えない。この問題は言語の流暢性をみる質問であるため、途中で言葉に詰まり約10秒程度待っても次の野菜の名前がでてこない場合にはそこでうち切る。採点は5個までは0点であり、以後は6個=1点、7個=2点、8個=3点、9個=4点、10個以上=5点となる。

合計点数

 

 以上のテストは正常なお年寄りなら簡単に答えられ、〈ぼけ〉のお年寄りには答えるのが難しい質問を問題にしたものです。それぞれの質問に答えられるかどうかで点数をつけ、合計点数で「痴呆かどうか」「痴呆ならどの程度か」を判断します。満点は30点で20点以下は痴呆の疑いありとされます。

1)注意点

(1)

目安として30点満点で、20点以下で痴呆あり、16点以下で中等度の痴呆、12点以下でやや高度の痴呆、8点以下で高度の痴呆とされています。

(2)

評価スケールの得点のみで決めることは困難で、痴呆の診断は臨床的な立場から総合的に判定することが大切であります。

(3)

1回の評価スケールでは痴呆とは決められない。

(4)

評価日および評価時間を記載しておき、同じ時間帯に評価を実施する。

(5)

評価スケールの所用時間は通常20分以内で終了する。

(6)

自尊心を傷つける場合があり、十分な説明を加えたのちに実施をする。

 

 

2)質問内容と点数と目的

(1)

お歳はいくつですか?
2歳までの誤差は正解・配点は、正解であれば1点 (記憶力)

(2)

今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
年月日、ようびがそれぞれ正解で1点(合計4点)  (見当識)

(3)

私たちが今いるところはどこですか?
自発的に出れば2点、5秒おいて、家ですか、病院ですか、施設ですかの中から正しい選択をすれば1点   (見当識)

(4)

これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。 

 

 

例1

自動車を3回繰り返し、復唱させる。 

 

例2

電車

 

例3

バナナ

いちご

ミカン

 

例4

イヌ

くま

にわとり

 

 この中から1つを選択し、3回繰り返したのち、復唱させる。選択した項目には印を付けておく。
3つとも答えられれば3点 (記銘力、再生力)

(5)

100から7を順番に引いてください。

 

例えば、100円から7円のものを買うとお釣りはいくらですか。93円と答えられれば、93から7引くといくらになりますか。
最初の答えが不正解な場合はそこでうち切る。
93と答えられ 1点  86と答えられればもう1点  (計算力)

(6)

これから言う数字を逆から言ってください。

 

6-8-2と3回言う。その後、逆に答えていただく。2-8-6と答えられれば1点答えられなければうち切る。 0点
答えられれば、次に4-1-7-5を3回繰り返し、逆に答えていただく。
答えられれば、もう1点    (記銘力、再生力、集中力)

(7)

先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。

 

自発的に回答があれば各2点。もし回答がない場合は以下のヒントを与え正解であれば 
各1点。 植物  動物  乗り物   (記銘力 再生力)

(8)

これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。

 

無関係な日常用品を5種類集め、高齢者に一つ一つ説明する。
目を閉じてもらい、品物を隠す。回答1個につき1点。  (記銘力、再生力)

(9)

知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。

 

回答された野菜の名前は書きに記入。
0~5個は0点 6個は1点、7個は2点、8個は3点、9個は4点、10個は5点
途中でつまり約10秒待っても回答のない場合はうち切る。