音楽療法とは?ー1

   
               フェルメール「ギターを弾く女」

音楽療法のご紹介(音楽療法とは?①)

メディカ倉敷北公式ブログをご覧の皆様、はじめまして!
事務員兼音楽療法士の鈴川です。
事務の仕事と、施設内の音楽環境の管理や、
音楽的な活動の提案・実施を
もう一人の音楽療法士・上田と共にさせていただいています。

これから下にお示しした8回のシリーズで鈴川・上田が
音楽療法についてご紹介していきます。

音楽療法とは?①②
どんなことをするの?①②
音楽療法のメリットって?①②
音楽療法士はどんな仕事をするの?
実際にどんな楽器があるの?


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さて、今回は、音楽療法とは?ということで
皆様、音楽療法と聞いて、
どんなことをイメージされるでしょうか?

みんなで楽しく歌を歌ったり
体操したりして遊んでいるイメージを
思い浮かべる方もいらっしゃると思います。

見た目はその通り!!
…なのですが、実はしっかり考えられているんです!

このブログを通して知っていただけたらと思います。



まず、音楽療法ってどんな効果があるの?とお考えの方もいらっしゃると思うので
いくつか論文として発表されているものをご紹介いたします。

・音楽を聴くとNK細胞の量が増え、
細胞の活性化率も上がっていたそうです。
NK細胞は免疫機能と深く関係しているもので、
この研究で音楽を聴くと、免疫力がUPするということがわかります。

・失語症の方で、発語が難しくなった方が、
歌を歌うことによって少しずつ日常生活でも
簡単な発語ができるようになった。

・認知症の方がなじみの曲を聴いた後の発言率が上がった。

・麻痺のある方に歩行訓練を音楽をつけて行ったところ、
音楽のないときに比べ、スムーズに体を動かすことができていた。

今上げたもののほかにも、たくさんの研究がなされ、
結果が出ているものもあります。
ご興味があればどうぞ調べてみてくださいね!
次回は、もう少し詳しく音楽療法についてご紹介いたします♪



参考文献
長谷川嘉哉、久保田進子、稲垣俊明、品川長夫:音楽療法によるナチュラルキラー細胞活性および細胞数の変化、日本老年医学会雑誌、28(2)、pp201-204、2001

三好亘明、頼島敬、伊藤智、柿崎次子、糟谷由香、柴田麻美:リズム、音楽、脳、共同医書、2006、東京

高橋多喜子:なじみの歌の歌唱が痴呆性老人の社会行動改善に及ぼす効果、高齢者のケアと行動科学、3、pp58-64、1996



コラム音楽療法のご紹介(番外編)

 鈴川さん、お疲れ様。
 音楽療法の紹介は、上田さんとお二人でよろしくお願いします。

 音楽療法というと、私らの持っているイメージとしては
やはり、聖路加国際病院の100歳超えてもかくしゃくたる
日野原重明先生が解説されていたものが思い浮かびます。

 ・・・昔ネット仲間の
    とみえもんさんといわれる方から
    いただいてきた素材です。
    なかなかいいでしょう!・・・

 日野原先生は、15年位前の文献に・・・
 音楽の心身への影響
A.身体的には
  1.筋肉の弛緩を促進する。
  2.不安やうつを和らげることによって慢性の痛みの悪循環をたち切り
   痛みの知覚を和らげる。
  3.身体活動を可能な限り積極的に行う手助けとなる。
B.心理的には
  1.自意識を高め、不安やうつを和らげ、患者のムードを調整する。
  2.患者にとって、意味のある出来事を思い出させ、意識上、意識下の
 広範囲にわたり言葉では表わせない感情をおこさせる手助けとなる。
  3.現実を認識させ、夢を表現し、感情に直接訴えることにより、広範囲に
   わたる感情を、言葉ではない音楽によって表現させる。
C.社会的には
  1.社会的に受け入れられる自己表現の手段となる。
  2.文化的違いと孤独への橋渡しとなる。
  3.精神的な結びつきを刺激することにより、家族や友人とのつながりを深める。
  4.病気以前の患者の生活へのつながりとなる。
  5.グループ参加の一つの機会を与える。
  6.楽しみと気分転換となる。
D.精神的には
  1.内的な感情表現となぐさめと自信とを感じさせるための手段を与える。
  2.疑い、怒り、罪の恐れ、人生の最期に残された意味についての疑問などを
   表に出させる手段を与える。
 こんな情報を発表されていました。

 それから、なるほどと同感できるのは 同質の理論
 よく、気分が落ち込んでいる時は、むしろ短調(経験上、単調というより)で
静かな曲が受け入れられる・・・という事ですね。
 あながち、アルビノーニなどのメランコリックな曲を流すのも悪くはないなあ。

 ここで聞こえて
 きそうな音は
 ダメでしょうね。

 ではみなさん、期待しております。
 
 医局の宮原でした


音楽療法とは?②

前回の記事でたくさんなされている研究のごく一部を
ご紹介いたしましたが、今回も引き続き「音楽療法とは?」
というテーマで書かせていただきます♪


音楽療法とはいったい何なのでしょう?
日本音楽療法学会の定義に基づいてご紹介していきたいと思います。




これだけ読むと難しいですが、言葉を簡単にすると、
音楽の、感情を動かす力や、運動を促進する力
記憶と結びつきやすい特性などのさまざまな力を利用して
困難を感じておられることに対してアプローチをしたり、
より豊かな生活を送られるように機能の改善などの支援をしていく療法です♪



下の図は音楽療法の流れを示しています。




音楽療法の対象となる方の状態を理解し(アセスメント)
どんな目標に向かって
どんな音楽活動を行うか、
どんな音楽を使うかを考え(治療計画)
実際に対象者に音楽療法を行います(実施)
そして音楽療法中の行動や反応を観察し、
場合によっては目標や音楽活動を見直します。(評価)
この流れを繰り返しながら、音楽療法は行われます。



このように、活動自体は、音楽レクリエーションや音楽教育と
似たような部分もあるかもしれないのですが、
対象者の方々に合わせて
音楽のもつさまざまな力や特性を
ねらいをもって使っていくことが音楽療法の特徴といえますね


次回は、音楽療法は具体的にどんなことをするのかご紹介させていただきます。


 コラム音楽療法、頑張って!

 音楽療法の現場には素人ですので、そういう立場から・・・。

  音楽療法のイメージとしては
 リハビリの一つの分野という
 印象を持っていました。
  治療効果をあげるセラピーの
 ひとつとして、理学療法や
 作業療法に並べて音楽療法を
 あげてよいように思います。

  医療の分野でも、興味のある
 文献をみることが多いのですが
 今年見つけた文献で三重大学
 医学部附属病院音楽療法室室長で
 医師である佐藤 正之先生が
 このように述べておられました。

  科学に徹することが音楽療法
 普及への最短ルート

 本邦には,日本音楽療法学会を
はじめとする学会資格による音楽療法士が約6000人いると言われている。
一時期作業療法士や理学療法士,言語聴覚士と同じ国家資格化が期待されたが
結局,認可には至らなかった。その理由として,エビデンスの絶対的な不足が
あげられる。医学的基準を満たした良質な研究・報告がある一方,「音楽を用いて
何かすればすべて音楽療法」といった,レクリエーションとしか言いようのない
ものもある。”悪貨は良貨を駆逐する”のたとえ通り,後者のような報告を目にした
人が音楽療法そのものについて疑念を感じたとしても不思議ではない。
 音楽がヒトにもたらす効果についてはことさら慎重に評価したい。誰が見ても
科学的に疑義のないデータを通して,音楽療法の有効性を世に示したい。愚直な
までに科学に徹することが,医療現場で音楽療法が市民権を得るための最短の
道である。

 ・・・これは、メディカ倉敷北がオープンする前に、うちのセラピスト達に
お願いしたことと同じです。そうした治療法としての考えがベースにあるのだと
いうことは、12月10日や21日のブログにSさんが紹介してくれています。


 佐藤 正之先生の文献では 
 音楽療法の定義と原則

 音楽療法は「精神および身体の健康の回復・維持・改善という治療目的を
達成するうえで音楽を適用すること」(全米音楽療法協会)と定義される。
治療目的を有することから,単なる嗜好・娯楽としての音楽聴取・歌唱行為とは
一線を画する。音楽の適用方法により,受容的音楽療法と活動的音楽療法に大別
され,それぞれ音楽の聴取と歌唱・演奏を治療手段として用いる。実際の療法では
両者がさまざまに組み合わされる。

 受動的音楽療法に関しては、北大の脳波等を使った実験の文献を見たことが
あります。その研究では一般的な方を対象にしていたようですが、一見心の
動きが乏しいように見える重度のパーキンソン病の患者さんなどにも、十分
治療として対応できそうな印象を受けました。


 音楽療法の大原則に「同一性の原理 (isoprinciple)」がある。これは,治療に
際してはその時点での患者の症候に合致した性質の曲から入り,次第に目的とする
状態に近づけるべく楽曲を変えていく,というものである。例えば,うつの治療に
音楽を用いるとき,いきなり元気で明るい楽曲を用いるのではなく,まずは落ち
着いた静かな曲から導入し,患者の様子をみながら次第に明るさ・活発さを増して
いく。身体リハビリテーションで,患者の回復に合わせて加える負荷を替えていく
のと同じである。音楽療法士には,病気と症状,評価バッテリーについての知識と
何よりも患者の心身の変化を鋭敏に察知する感受性が必要である。


 メディカ倉敷北は、まだまだ入所の方がすくないのですが、次第に対象の
お年寄りが増えてきたところです。また、最初の予想より、軽度の入所者さんも
近々ご入居とのことで、対象の方の幅も広がる見込みです。治療の対象者として
良質な患者さん(あえて、そう呼ばせていただきますが)が集まる性格の住宅を
想定しておりますので、よい経験を積ませてもらい、更に優れた臨床技能を身に
つけてさせてもらうよう、頑張って下さい。



 佐藤 正之先生の文献では、具体的な病名を挙げて音楽療法による治療の紹介が
されていますが・・・長くなりますので、また今度。
 
 ちょっとうれしい誤算の感があるのは、U音楽療法士が従来のイメージの音楽
療法士さんで、S音楽療法士が神経学的音楽療法というメソッドを勉強して
いました。神経学的音楽療法Neurological Music Therapyというのは、よく
知りませんでしたが、生理学的、心理学的な要素を重視した療法のようです。
 入所やデイサービスの利用者さんが増えたらレクリエーションと、音楽療法
神経学的音楽療法は3者別々にプログラムを組むようにしていく方が効果的
かなあ!?それくらい(例えば、理学療法と作業療法くらい)の違いがある
ように思われます。入所の方が増えて、この春位にそれぞれのチームが組める
ようになるとよいですね。
   
  
     倉敷北病院医局 宮原