(左)ブーグロー「芸術と文学のミューズ」
(右)アングル「ドーソンヴィル伯爵夫人」
これまでのADL評価法
日本では、病院毎に別々のADL評価法を使っていることが多かったようです。それぞれの病院の環境に合わせた評価法は一見合理的ですが、困ったことが起こります。例えば、自分たちと異なるADL評価法を使っている病院から「65点の患者です」、と転院前に申し送りをしてもらっても、どの程度のADLレベルなのかさっぱりわかりませんね。共通のADL尺度が必要なわけです。
ADL評価法の中で最も用いられてきたのがBarthel indexという1965年に雑誌に掲載された評価法です。Barthel indexはすべて自立していれば100点、すべて介助してもらっていれば0点という採点法で、食事、整容など10項目に5点から15点の配点がされています。Barthel indexは誰が採点しても似たような点になりますし、入院するとき40点以上あればだいたい家に帰れる、など予後を予測するのにも使えるよい評価法です。ただ、採点が5点刻みで、症状の改善が捉えにくい弱点を持っています。
同じ1960年代にはKatz indexやKenny scoreなども使われ始めました。Katzは、ADLの項目の難しさには一定の順序がある、と考え、どの項目まで出来るかを基準にADLのレベルを採点しました。それぞれに一長一短があり、それからのちも、20個、30個とADL評価法は発表されていきました。評価法の数が多いということは、とても優れた評価法が出なかったことの裏返しです。
ADL
BI
排尿自制,排便自制,トイレ動作,食事,更衣,整容,椅子とベッド間の移乗,入浴,移動,階段昇降の10項目からなる.
FIM
社会認知機能,コミュニケーション機能評価を含む6つの大項目,合計18の小項目からなる順序尺度の評価.
評価は7段階で行われる.
監視が必要な場合は段階5である.
Katz Index
6項目のセルフケアについて評価される.
PULSES
身体状況,各機能,知的情緒的状況の6項目を点数化している.
セミナーの一つとして、Evaluation
of ADL(日常生活動作評価)が組まれていました。講師はアメリカBuffalo大学のGranger CV先生(写真向かって左)と、イギリスRivermead
Rehabilitration CentreのWade DT先生(写真右)のお二人でした。
Granger教授はFIM(機能的自立度評価法)の生みの親であり、以前は修正Barthel indexを発表するなど、Barthel indexにも造詣の深い方です。今回はRasch分析などADLの尺度問題を中心に話されました。Wade先生は、FIMをglobal measurementとして捉える立場にいて、Barthel indexの信望者です。今回もその主張を重ねていました。
質疑応答にはいると、ADLの点は加算して良いのかとか、Rasch分析などのやや枝葉末節的な議論が多かったようです。Dittuno教授は「出来るけれどもしていない状況の評価の仕方」に言及していました。
もちろん、FIMとBarthelのどちらがよいかという結論には到達しませんでした。
面白かったのは、Wade先生と同じイギリスでもFIM/FAM使用者グループというのが芽生えてきていて、Dr.
Turner-Stokesがその代表として質問に立つなりの活躍をしていました。